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善吉と弥平が声を揃えた。さくらは目線だけを上げて関口と呼ばれた男を見た。髪型は歳三がしていたような、髷を切り落とした短髪であったが、ぴしっと手入れの行き届いた羽織と袴を身にまとっている。
関口先生なる男が突然登場したことにより、役人風の侍は狼狽の色を見せた。
「せ、先生……⁉」
侍の促すような視線に、関口は答えた。
「うむ。拙者は語学所教授方、関口伸吾。この者らは拙者の古い知り合いだが、取り込み中であったか?」
「ご、語学所の方でしたか! ええと、この……方々が、少々道に迷っているように見えましたゆえ……」
「そうか。それは大義であった。だが拙者が請け負うゆえ、心配はいらぬ。行くぞ」
有無を言わさぬ様子で関口は踵を返し歩き始めた。さくら達は慌てて後を追った。
「関口先生。ありがとうございました。助かりました」
善吉が丁寧に礼を述べ、関口は笑顔で頷いた。
「まさかこんなところでお前たちに会うとは。あの場ではゆっくり話をすることもできぬでな。拙者の屋敷に案内しよう。して、その女子は?」
「実は、少々訳ありでして……」
「そうか。まあ、見るからに普通の女子ではないな」
関口は、楽しそうに目を輝かせてさくらを見た。
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