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関口に連れられやってきたのは、街のはずれにある武家屋敷だった。このあたりは異人の居留区とは違い、昔から日本人が住む場所らしい。
さくら達は簡単に体を清めさせてもらい、借りた着物に着替えた。それから室内に通され、関口と改めて対面した。つい数刻前まで、死人のような姿で船に揺られていたのが信じられない。畳の上に座ったのもさくらにとっては久しぶりだ。
「それで」
関口は興味津々といった様子でさくらを凝視した。
「うーむ。何から聞くのがよいか。新選組に女子が、というのも気になるが、善吉たちがあれからどうしていたのかも気になるなあ」
「あれから、というのは……」
さくらは思わず口を挟んだ。関口は嫌な顔もせずに答えた。
「遣欧使節団の洋行が終わったあとだ。善吉たちとはそれきりだったゆえ。拙者は神戸の語学所から、つい最近横浜に来たものでな。まさかここで再会できるとは、思ってもみなんだ」
「け、けんおうしせつだん……?」
「なんだ、話していないのか」
関口が目を丸くして善吉と弥平を見た。二人は
「いやあ、バタバタしてましたから」
と気まずそうな顔をした。
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