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それから江戸に戻った善吉と弥平は用済みとなり、流人船の水夫になるよう言い渡されたという。そこからの経緯も、善吉は淡々と話して聞かせた。関口は真剣に頷きながら話を聞いていた。
「こうやって横浜に戻ってこられたのも、なんだかんだで島崎さんのおかげっていうか。だから、せめて少しは協力できればと思って。何かうまいこと西に行く船に乗せられれば、あるいはと」
「ほーう」
関口はにんまりとした笑みを浮かべ、さくら達三人をぐるりと見回した。
「お前たち、運がよいな。あと数日遅かったらこの策は使えなかっただろう」
「と、言いますと……?」
さくらはごくりと唾をのんだ。策があるのか。八方塞がりと思われたこの状況を打破できるなら。藁にもすがる思いで、関口の次の言葉を待つ。
「江戸城の明け渡しに続いて、幕府の軍艦もいくつか新政府に差し出すことになった。『朝陽』『観光』『翔鶴』そして『富士山』だ」
富士山丸は、さくら達新選組隊士が大坂から引き上げる際に乗ってきた船だ。新政府軍に取られると聞いて、さくらは胸を痛めた。関口は話を続けた。
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