15.種明かし

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 それから江戸に戻った善吉と弥平は用済みとなり、流人船の水夫になるよう言い渡されたという。そこからの経緯も、善吉は淡々と話して聞かせた。関口は真剣に頷きながら話を聞いていた。  「こうやって横浜に戻ってこられたのも、なんだかんだで島崎さんのおかげっていうか。だから、せめて少しは協力できればと思って。何かうまいこと西に行く船に乗せられれば、あるいはと」 「ほーう」  関口はにんまりとした笑みを浮かべ、さくら達三人をぐるりと見回した。 「お前たち、運がよいな。あと数日遅かったらこの策は使えなかっただろう」 「と、言いますと……?」  さくらはごくりと唾をのんだ。策があるのか。八方塞がりと思われたこの状況を打破できるなら。藁にもすがる思いで、関口の次の言葉を待つ。 「江戸城の明け渡しに続いて、幕府の軍艦もいくつか新政府に差し出すことになった。『朝陽(あさひ)』『観光(かんこう)』『翔鶴(しょうかく)』そして『富士山』だ」  富士山丸は、さくら達新選組隊士が大坂から引き上げる際に乗ってきた船だ。新政府軍に取られると聞いて、さくらは胸を痛めた。関口は話を続けた。
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