15.種明かし

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「で、今まで操縦・手入れを担ってきた水夫も一緒に乗り込むことになる。明後日『翔鶴』が横浜を出航して、西へ行くそうだ。長州に残っている兵を乗せて、また(こっち)に戻るらしい。島崎殿、どうだろう。さすがに長州まで行くわけにはいかぬゆえ、どこか途中で下ろしてもらうというのは」 「そ、そのようなことができるのですか……?」 「うむ。翔鶴は大きな軍艦だが、物資や燃料の補給のために紀州や大坂で停泊するだろう。その機を狙えば」 「よいの……ですか?」  さくらは善吉と弥平を交互に見た。二人とも、にこりと笑い、頷いた。 「ありがとうございます!」  さくらは深々と頭を下げた。行ける。京に行ける。これで勇を、源三郎を、連れ帰ることができる。  ただし、簡単な道のりではない。流刑を逃れて脱走した新選組の島崎朔太郎であることは絶対に露見してはいけないのだから。さくらの新たな戦いが始まろうとしていた。
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