一、人間国と獣人国

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 ティエリーク大陸。この大陸には二種類の種族が共存していた。一つは人間国と呼ばれている。その名の通り、人間が住んでいる国だ。  この国の王侯貴族には一夫多妻制が認められており、人間国の国王は正妻となった王妃の他にもたくさんの妃が後宮で生活をしていた。しかし正妻は身体が弱く、後宮での生活は負担が大きかった。そんな王妃のため、国王は城内に離れを作り、王妃をそこに住まわせることにしたのだった。国王がいちばんに愛していたのは、この王妃だけであった。  そしてもう一つの種族は、獣人族だ。獣人族が住んでいる国はその名の通り獣人国である。この国は一夫一妻制だ。それは獣人国の王族でも通じるルールであった。しかし王族には『レイガー』と呼ばれる時期が一年に一度やって来ていた。このレイガーは、発情期のようなものなのだが、発情期と違う部分は酷く気が立っており、イライラとしやすい点にある。そのため判断を誤りやすく、ティエリーク大陸の歴史上で何度も人間国に攻め入っては戦争に発展したことがある。  そんな歴史的背景から、人間国との共存を希望した獣人国の国王は、人間国の国王へと一つの提案をした。 『年に一度、レイガーの時期に人間の生贄をこちらへ渡してはくれないか』  人間国の国王はこの条件を飲んだ。
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