108人が本棚に入れています
本棚に追加
人間国から生贄が渡されると、獣人国の王はその人間に発情し、人間国への敵対心を和らげることが出来たのだった。
そんな二種類の種族が生きているティエリーク大陸の、人間国の方に、一人の姫がいた。名を『シェル』と言う。シェルは人間国の国王と正妻である王妃の間に生まれたたった一人の子供だった。
王妃はシェルの誕生を機に後宮を離れ、城内の離れに越したため、シェルは後宮の空気を直に感じたことはなかった。離れは急ごしらえで建てられていたため、中はとても狭かったものの、親子二人で生活する分には申し分なかった。王妃もシェルも、家事を積極的に行い、出来ないところだけ女中に助けて貰う、と言う生活だった。
そうして育ってきたシェルは少し脳天気な、良く言えば前向きな性格になっていた。少しのことではくじけない、強い心も持っていた。
こうして親子二人の二人三脚の生活だったが、それもシェルが十六歳の頃に終わりを迎える。身体の弱かった王妃が病に倒れ、そのまま亡き人になってしまったのだ。
今日はそれから三年が経った、王妃の命日である。
シェルは母親の墓標の前に、喪服に身を包み立っていた。そんなシェルの傍には小さな男の子が立っている。
最初のコメントを投稿しよう!