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シェルでも獣人国が一夫一妻制であることは知っていたようだ。一夫多妻制で育っているシェルは、そろそろどこかに嫁ぐ年頃でもある。しかしやはり、女としては一人の女性として、一人の男性から愛されたいと言う気持ちはある。そうは言っても人間国でそれはあり得ないことだった。
「ヴァンちゃんは、獣人族を見たことがあるの?」
「あー……、獣人国へ行ったことはある」
「どんなとこっ?」
ヴァンの言葉にシェルは歩いていた足を止めて、ばっとしゃがむとヴァンと視線を合わせて尋ねた。そのシェルの勢いにヴァンは思わず身体を後ろへとのけぞらせる。
「お、落ち着けよ、シェル……」
「獣人国のこと、詳しく教えて!」
ヴァンの両肩を掴んでいるシェルの手に力が入る。ヴァンは、お、おう……、とうわずった返事をすると自分が見た獣人国について話しを出した。
ヴァンが獣人国へと出向いたのは、先の話に出てきたゼール王子の王位継承権獲得を祝うためだった。現状、人間国での王位継承権を得ている自分が、父王に連れられて獣人国へと出向くことになったのである。
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