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さて、人間国を出て西へ進むと現れるのが獣人国である。この国の国境を警備しているのもまた、獣人族であった。国境を越え、獣人国の王宮へと向かう馬車の中で、ヴァンは幼い好奇心を抑えきれず、馬車の窓からそっと外を覗いてみた。するとそこには、
「耳が頭の上にあって、太い尻尾をゆらゆら揺らしている獣人族たちが、街に溢れていたんだ」
「凄い! そんな姿をしているのね!」
「牙が見え隠れしてるヤツもいた」
ヴァンの話にシェルの瞳がますます輝いていく。ヴァンの話は続く。
獣人族は皆、大きな体躯をしていた。とりわけ男性の獣人は肩幅が広く、みな一様に筋肉質である。幼いヴァンからしたら、その大きさは少し恐怖心を抱くものだった。
「あそこまで大きい身体のヤツ、人間にはそうそう居ないよ」
ヴァンは思い出して怖くなったのか、ブルッと身震いをした。
「肌の色はっ? 後、髪の毛とか、そう言うものはあるのかしらっ?」
シェルはヴァンの話を聞いてどんどん獣人族への興味を抱いていく。ヴァンはそんなシェルからの質問に視線を宙に彷徨わせながら、なるべくしっかり思い出して答えた。
「肌は、焼けているヤツも多く居た。髪の毛は尻尾の毛よりも人間の毛に近い感じがしたかな」
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