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他にも、体毛は思っているよりも濃くはなかったと言うことだ。
ヴァンは獣人、と言うからにはてっきり、口元が獣のように前へと突き出していて、全身が毛むくじゃらの二足歩行の生き物を想像していたのだが、その想像よりも人間らしい外見に驚いたと言う。
「大きいだけで、人間と大差ないのね……。不思議な生き物だわ……」
ヴァンからの話を聞いたシェルは、いつか獣人族と会ってみたいと思うのだった。
そんなことを思っているシェルは、一般的な人間女性に比べて身長も低く華奢である。そう言った点では獣人族とは真逆の体格だろう。
シルバーの長い髪の毛と真っ青な瞳は人間国の王家の象徴である。ヴァンもまた、美しいシルバーの髪を持ち、瞳の色は濃いブルーであった。
そんな二人は再び、手を繋いでシェルが一人で暮らしている離れへと歩いて行った。母親の墓から離れはそんなに遠い位置にはない。ただ、離れは王宮内の森を切り開いて出来た場所のため、道中少し入り組んでいる。
シェルにとっては勝手知ったる森の中ではあったものの、ヴァンには最初、何度もシェルと王妃が住んでいる離れを目指しては迷子になりかけていた。
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