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離れに到着したシェルはすぐに台所へと向かう。それからお湯を沸かしている間に紅茶の準備を行う。ヴァンはその間、小さなテーブルの前にある椅子にちょこんと座った。
「話は戻っちゃうんだけど、ヴァンちゃんって、獣人族を見てみた感じどうだったの? 好き? 嫌い?」
「お、俺っ?」
急に話を振られたヴァンが面食らう。しかしシェルの声は柔らかく、質問の答えを隠すほどのことでもないと思わせた。だからヴァンは素直にこう答えた。
「ちょっと、怖い、かな……」
「怖いの?」
シェルは沸騰したお湯でカップを温めると、少しだけお湯を冷ましてから紅茶を煎れていく。そうして出来上がった紅茶をヴァンに差し出しながら、どうしてヴァンが怖いと思うのかを尋ねた。
「俺が会ったゼール王子ってヤツは、街で見かけた獣人族よりも大きい気がしたんだ。しかも全く笑わなくてさ。視線も鋭くて、俺、このままコイツに喰われるんじゃないかって思っちゃったよ」
ゼール王子の祝いのために出向いた王宮内での出来事をヴァンは思い返していた。
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