もう一度、誰かを愛せたら

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タイミングが見計らえないまま、無情に過ぎていく時間。 2人にとっては天国かもしれない。 俺には地獄でしかない時間。 豊への片思いを打ち明け、応援してくれていたはずの涼太とずっと好きだった豊との性行為。 「涼太、ゴムは?」 「んー?あるに決まってるじゃん。間違って妊娠したくないもん。咬まないでよね、豊」 「咬まねーよ、涼太、ヒート中じゃないじゃん」 涼太が机の引き出しからコンドームを取り出した。 いつから2人は関係を持っていたんだろう...。 ゴムの束を一枚、ビリッと破いた。 涼太も豊もデニムだけを脱ぎ、豊は自身に慣れた手つきでゴムを嵌め、涼太の両脚を持ち、引き寄せた。 豊の勃起が涼太の中に入っていく....。 「....あぁ」 1つになった2人が同時にため息のような声を出した。 セックスを間近で見るなんて....。 見たくないのに目が離せない。 不思議と興奮したりは無かった。 次第に豊の腰付きが激しくなると、涼太は豊に、 「そこのタオル取って」 と頼み、タオルを噛んだ。 激しくなるにつれ、そのタオルの反対側を豊が噛んだ。 2人とも切ない表情で見つめ合い、腰を揺らす。 俺はそこで瞼を閉じた。 俺に声を聞かせまいと、涼太と豊は互いに一枚のタオルを噛み、セックス。 もう見ていられなかった。 消えてしまいたい、ここから...。 そう願いながら....。 暫くすると、腰を打ち付けているような音がし、その音も止み、涼太と豊のはあ、と息づかいだけ。 その後はまた小声でたまに笑いながら当たり障りのない会話をする2人がいた。 ....終わった。 そう感じた、夜。
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