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人を信じるって怖い。
いつか裏切られそうで。
ううん、違うな...。
勝手に信じていただけ。
勝手に傷ついただけ。
そう思わせたあの頃。
◆◆◆
俺、葉山樹、オメガ。
同じくオメガの涼太、アルファの豊とは小学校からの友人であり、幼馴染だった。
中学の頃、俺は秘かに豊に恋をしていることを涼太に打ち明けた。
小柄であどけない俺と違い、同じオメガの涼太は豊まではないけど、背丈があった。
当時、160満たなかった俺と違い、涼太は既に165cm、身長があり、豊は170近くあった。
「へえ、豊に?」
「うん」
俺の実家の部屋で2人きり。
涼太は両手で頬杖をつき、俺の話しに食入り、笑顔を見せた。
「豊のどんなとこ?」
「えーっ...恥ずかしい」
「いいじゃん、2人しかいないんだし」
「豊には内緒にしてくれる?」
「うん」
俺は豊の好きなところを涼太に包み隠さず話した。
とりあえず、カッコいいところ。
鼻は程よく高く形が良く、唇もまた形が良く、唇を見るとついドキドキしてしまう。
キスしたらどんな感じかな、なんて想像し、思わず視線を唇から逸らしてしまう。
漆黒の黒曜石のような瞳は吸い込まれそうで。
クールさが強いのに、笑顔は堪らなくなる、可愛い。
勉強で悩んでた際、
「大丈夫、ドンマイ」
背中をポンッと優しく叩いてくれ、わからないところを教えてくれたりもした。
「そっかー、本当に好きなんだ、豊のこと」
嬉しそうな涼太の声に照れた。
「樹、顔、真っ赤だ。可愛いっ」
「もう!恥ずかしいってば」
そうして、照れ隠しにジュースを飲んだ。
その後も俺と涼太、豊は仲の良い友人として、付き合いがあり、特に豊との進展はなかった。
初めての恋。
臆病でもあったけど大切に育みたかった。
いつかはこの気持ちを打ち明けようとは思ってはいたけれど...。
だからこそ、あんなことになるなんて思いも寄らなかった。
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