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7月10日
所詮家族の始まりだって、他人からなのだ。
ノロケ話のオチにつけてきた文言にもやもやしてしまうのは、今朝のやりとりのせいだろうか。
平日の朝食は、和食と決まっていた。焼鮭と漬物で白飯を平らげて、何の気なしに納豆のパックを開ける。
「おかわり、いる?」
「いや?いいよ」
「リンって、納豆そのまま食べるんだ」
「ヘン?」
「いや、新鮮だなって思っただけ」
話題はすぐに今日の予定に移ったので、気にすることはどこにもない。今日は残業がなければ、妻のショートケーキを買って帰ろうなんて考える余裕もあった。
でも今思い返すと、納豆の味付きタレはご飯とあわせることを前提に作られているのだ。
やっぱりヘンなのか、ヘン...。
考え事に夢中だったから、女性社員の立ち話に足が止まってしまうのも仕方ない。
ブチョーがランチに納豆つけてて、ないわーって思ったのよね。
あー、ランチかー。朝に食べ忘れたんじゃ?
かも。そういや最近、納豆食べないな。健康にはよさげだけど。
私も。学生の時は毎朝食べてたけど、嫌になってさ。
わかる。ニオイとか口に残るカンジとか。
そ。それで親と喧嘩したら、次の日から出なくなって。
勝ったか。
どうかな。ある日食べたくなって冷蔵庫開けたときには2個入りのパックに変わってたから。
何それ。
詳しくは話してないけど、親もショックだったのかなとかさ。
ちょっ、納豆でそんな語れるやついないよ!
えー、やめてよー。
家に帰ると、妻は台所で食器を洗っていた。
「おかえり」
「ただいま...何食べてるの?」
頬の膨らみから考えると、飴かチョコか。甘党の彼女なら、どちらもありそうだ。
「ん?」
三角コーナーに向かって何かを吐き出すと、カコンと音を立てて何かが落ちた。
えっと、これは...。
「梅干し。たくさん買ったから」
「梅干し?」
白飯の真ん中にある、アレだ。それを、飴玉のように舐めていたということか。塩分、すごそう。
「私の中で梅干しっていえば、おばあちゃんが漬けてた塩っ辛いやつなんだよね。今の梅干しって、ご飯と食べるには甘くて」
「へえ」
てっきり、はちみつ入りの梅干し専門かと思っていた。
「ごめんね、行儀悪くて」
「ううん」
それ、俺にもちょうだい。
納豆の日
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