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7月16日
にじのくにの王子さまは、雨上がりの空ににじをかけます。
土台になるアーチをつくって、きれいな七色にぬります。
しかし、まだまだしゅぎょう中。
ぐにゃりとまがってしまうこともあれば、ぐるっとわっかができてしまうことも。
この前なんて、色がうすすぎてだれにも気づいてもらえないしまつ。
お父さんである王さまを、カンカンに怒らせてしまいました。
王子さまは、めげずにれんしゅうをつづけます。
きみにもほら、見えるかな?
水をまく、ホースの先。
お花に水をあげている、じょうろの近く。
シャボン玉に色をぬるのは、しなんのわざでした。
そして、王子さまにおおしごとがやってきました。
大雨がふった後の空に、大きなにじをかけるのです。
しんぱいする王さまに、王子さまは言いました。
「まかせてください。今までで、いちばんのにじをごらんにいれましょう」
すれ違う人が、ひとり、またひとりと、傘を畳んでいく。つられるように、買ったばかりのビニル傘を畳んだ。
すると急に不快感が襲ってきて、想像以上に濡れていたことに気付く。
この先のコンビニに寄って、美味しいと言っていたプリンを買って帰ろう。ちゃんとごめんなさいを言って、...洗濯は自分でした方がいいかな。
上ってきた歩道橋を、急ぎ足で進む。
「あ!虹!」
わあ、きれい。 おっきいね。
誰が最初に声を上げたのかは、わからない。けれどこのざわめきは急ぐ足を止めさせ、俯いたままの顔を上げさせた。
ヤバいとエモいを繰り返してスマホを掲げ続ける女子高生の隣で、自分も同じことをした。恥ずかしくなって、写真の出来も見ずに階段を駆け下りたが、地上でも多くの人が同じ姿勢を取っていた。
おそるおそるスマホを取り出すと、軽やかな通知音が鳴った。
ごめんね。
そのままスマホをポケットに入れて、先を急ぐ。
こっちこそ、ごめんね。実はさっき、おもしろいものを見たんだ。
何て言おうか。写真、上手く撮れているといいな。たとえ手ブレが酷くても、逆光になっていても、虹が写っていなくても、笑い話にしよう。
手に提げたプリンが崩れないようにだけ気を遣って、足を止める人の間を縫っていく。
目的地の前で、当人が長靴を履いて立っていた。
「空、虹が架かってたでしょ。読みたくなって」
抱えた絵本には、虹色が塗られていた。
「そっちは?」
「...プリン、食べたくなって」
ちがうだろ。
建物の中に入ろうとする背中を呼び止めて、プリンの入った袋を差し出した。
「ごめん」
虹の消えた空を、もう誰も気にしてはいなかった。
虹の日
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