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7月2日
いつからか。なぜか。
自分の考えを言葉にするのが苦手なのは昔からなので、今更引け目に感じることはなかった。
いつから?
さあ?覚えてない。
なんで?
部活が同じ...だから?
じゃあ、2人は付き合ってるの?
いや、それはない。
微妙な笑みを浮かべるやつがいれば、心底わからないという表情で首をかしげるやつもいた。
飯を食うのは、1人より2人の方がいい。でも、恋人でなきゃいけないとか友人でなきゃいけないなんて、ルールはない。なら、隣のクラスのマネージャーと昼飯を食って何が悪い。どうせ、あいつも1人なのだし。
後ろめたさはないが、教室に入るときの視線には未だに慣れない。席替えをしたとか言っていたが、チクショウ、教室の真ん中とか狭いだろうが。
おずおずと椅子を差し出してくれた前の席の男子に一礼して、ありがたく座らせてもらう。あとは、持ってきた弁当を食べるだけ。
会話はない。当然だ。
目の前のやつは、小難しい文庫本を読んでいる。おまけに耳には、大きなヘッドホンだ。
昼休みの会話の波には巻き込んでくれるな、とでも言いたげだ。実際、フル装備中のこいつに話し掛ける猛者はいない。
――「いや、君めちゃめちゃキレられてたでしょ。あんなの見るとムリだって」なんていうクラスメイトの本音は、あずかり知るところではない。
本が閉じられたのは、手元の弁当の3分の2がなくなる頃だった。
自分の存在には気付いているはずだが、目を合わせようとしない。合わないのだ。いちいち目を合わせて、微笑み合うような仲ではないのだ。
というか、今日もちっさい弁当箱だな。そんなので足りるのか?
思ったまま疑問をぶつけないのは、実際に言い合いをしたことがあるからだ。喧嘩飯を食うくらいなら、1人の方がマシだ。
弁当箱が空になれば、代わりにスマホを取り出す。
何でまだいるのとでも言いたげな視線には、あえて絡まない。
だから、なんでそんなサイズなのにじっくり食えるんだ。
予鈴の5分前には席を立って、自分の教室に戻る。
「あ」
随分雑に呼び止められたものだ。どうした。
「この土曜、体育館の点検が入るからオフだって」
「マジか」
「マジ」
朝練のあと、自分が上がったあとに発表されたのだろうか。ま、いいや。どうせ放課後でも聞くだろうし。
「5時間目、寝ないでよ」
「るせえ」
今日は、普段よりご機嫌なようだ。
「じゃ」
ヘッドホンをしたのが、返事だろうか。かわいくないやつ。ま、求めてもないのだけど。
朝練と放課後の、真ん中の時間。特別ではないけれど、案外気に入っていたりする。
真ん中の日
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