7月2日

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ

7月2日

いつからか。なぜか。 自分の考えを言葉にするのが苦手なのは昔からなので、今更引け目に感じることはなかった。 いつから? さあ?覚えてない。 なんで? 部活が同じ...だから? じゃあ、2人は付き合ってるの? いや、それはない。 微妙な笑みを浮かべるやつがいれば、心底わからないという表情で首をかしげるやつもいた。 飯を食うのは、1人より2人の方がいい。でも、恋人でなきゃいけないとか友人でなきゃいけないなんて、ルールはない。なら、隣のクラスのマネージャーと昼飯を食って何が悪い。どうせ、あいつも1人なのだし。 後ろめたさはないが、教室に入るときの視線には未だに慣れない。席替えをしたとか言っていたが、チクショウ、教室の真ん中とか狭いだろうが。 おずおずと椅子を差し出してくれた前の席の男子に一礼して、ありがたく座らせてもらう。あとは、持ってきた弁当を食べるだけ。 会話はない。当然だ。 目の前のやつは、小難しい文庫本を読んでいる。おまけに耳には、大きなヘッドホンだ。 昼休みの会話の波には巻き込んでくれるな、とでも言いたげだ。実際、フル装備中のこいつに話し掛ける猛者はいない。 ――「いや、君めちゃめちゃキレられてたでしょ。あんなの見るとムリだって」なんていうクラスメイトの本音は、あずかり知るところではない。 本が閉じられたのは、手元の弁当の3分の2がなくなる頃だった。 自分の存在には気付いているはずだが、目を合わせようとしない。合わないのだ。いちいち目を合わせて、微笑み合うような仲ではないのだ。 というか、今日もちっさい弁当箱だな。そんなので足りるのか? 思ったまま疑問をぶつけないのは、実際に言い合いをしたことがあるからだ。喧嘩飯を食うくらいなら、1人の方がマシだ。 弁当箱が空になれば、代わりにスマホを取り出す。 何でまだいるのとでも言いたげな視線には、あえて絡まない。 だから、なんでそんなサイズなのにじっくり食えるんだ。 予鈴の5分前には席を立って、自分の教室に戻る。 「あ」 随分雑に呼び止められたものだ。どうした。 「この土曜、体育館の点検が入るからオフだって」 「マジか」 「マジ」 朝練のあと、自分が上がったあとに発表されたのだろうか。ま、いいや。どうせ放課後でも聞くだろうし。 「5時間目、寝ないでよ」 「るせえ」 今日は、普段よりご機嫌なようだ。 「じゃ」 ヘッドホンをしたのが、返事だろうか。かわいくないやつ。ま、求めてもないのだけど。 朝練と放課後の、真ん中の時間。特別ではないけれど、案外気に入っていたりする。 真ん中の日
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!