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Case 01 梅野隆一
梅野隆一は六本木に住むソフトウェア開発会社の社長だ。
部下からの信頼は厚く、本人も妻と娘を大切な家族として守っている。
そんな彼がパパ活に手を出したのはつい先日のことだった。
「他社のマッチングアプリの動作環境を視察するのは口実だ。俺だって性欲は持て余している。妻とはセックスレスの状態が何年も続いている。だから、性欲の捌け口がほしいんだ。」
隆一がマッチングアプリで女性を検索していると、ある一人の女性に指が止まった。
白い肌。
華奢な体型。
人を惹きつける魔性の貌。
女性の写真の下には、「青島早苗」と記されていた。
「青島早苗か。26歳。独身。職業は不明だが恐らく専業主婦だろう。悪くない。この娘を貰うとするか。」
パパ活をすると決めてからは早かった。
待ち合わせ場所に指定したのはスカイツリーの麓。絶好のデートスポットだった。
ふと、スマホの時計を見つめる。
「待ち合わせ時間は18時って約束していたな。今の時刻は17時56分。そして青島早苗は未だに来ない。俺は騙されてしまったのだろうか。」
しかし、隆一の心配は杞憂に終わることになった。
「ごめん!待ったかな?」
早苗の笑顔に、隆一の心臓は大きく脈を打った。
「ぜ、全然待ってない。俺も今スカイツリーに来たところだ。」
「ですよね。もしかして、パパ活は初めて?」
「あぁ、初めてだ。何からすればいいのか分からないが、とりあえずお前とデートがしたい。」
「デートは恋愛の基本。もしかして、行き先はもう決めているんでしょ?」
「もちろん。このスカイツリーの天辺だ。」
「アタシ、高いところがあまり好きじゃないんです。けれども、あなたの顔を見て少し安心しました。東京の夜景とか、ここ数年見たことなかったんです。」
早苗は、隆一の腕にしがみついた。
隆一の心臓の鼓動が早くなる。
それは、自分の妻に感じた性的衝動とは別の性的衝動でもあった。
「早苗、俺と付き合わないか。」
「いやぁ、冗談はよして下さいよ。飽くまでもパパ活の範疇で付き合ってください。」
「分かっている。それでも俺はお前に惹かれた。だから、一夜を共にして欲しい。この一夜は、俺にとってマンネリ解消の一夜になりそうだ。」
「マンネリ解消って、もしかして妻帯持ちなんですか?」
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