三十路オメガお化け屋敷に挑む

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 会議の準備が終わったあと、木崎は社長室で寺山からイヤホンを渡された。 「これが……つまり」  シンプルなつくりだけど、上品な光沢がありとても軽い。 「社長が長らく愛用していたものなので、メンテナンスは万全です」 「はぁ」  木崎はなんとも言えない顔をして、曖昧な返事をするしか無かった。そもそも、諸手を挙げて喜べるような品物ではない。 「不要なら捨ててくれて結構です。それとこれがパスワードですね」  木崎に小さなカードを渡してきた。そこにはアプリのURLと不規則な並びのパスワードが記されていた。 「社長からですからね。その意味をよく理解するように」 「……賜りました」  木崎はそう言ってそれらを背広の胸ポケットにしまい込んだ。これはつまり、義隆には絶対内緒の事柄だ。  そして、重たい意味がある事も理解した。  ───────  昼休み、トイレ個室でアプリを立ち上げてみると木崎は思わず口に手を当てた。  表示された情報があんまりだし、イヤホンから聞こえてくる音も鮮明だ。 「これは、確かに……まずいですね」  スマホ画面には赤いRecの表記。  木崎は慌ててボックスの中を震える親指で確認するのだった。もちろん、消すかどうかはまだ決断してはいない。
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