英雄に至る旅

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魔物を倒し、魔術師の足取りを追ううちに 数年の年月が経ち、 その間も、色々なことがありました。 そして少年が青年に成長したとき、 ついに邪悪な魔術師の足取りをつかみ、 直接対峙することになりました。 邪悪な魔術師は、まるで死神のような 黒いローブを被り、性別も年齢も、 人間かさえも分からないような 外見をしていました。 「なぜ、魔物を操り人々を傷つけた」 青年が聞いても、魔術師は答えず、 くつくつと(たの)しそうに(わら)いました。 先に仕掛けたのは魔術師の方からでした。 禁術と呼ばれる死の魔術を青年に放つと、 青年はそれを剣で弾き、 話し合いでの解決は不可能と判断して 仲間たちに戦いの合図を送りました。 流石に大勢の魔物を操れるほどの 魔術師だけあって、 戦いは熾烈(しれつ)を極めました。 青年たちは魔術師の放った黒魔術や禁術、 呪いの数々を弾き、避け、時には 魔法で相殺していきましたが、 危険な魔術の数々に、斬りかかるどころか 近づくことさえも困難な状況でした。 青年も僧侶も剣士も限界を迎えかけた その時、 青年たちの窮地(きゅうち)を知り、 王国の兵士たちが増援に駆けつけました。 それを見た魔術師は、 また愉しそうに嗤い、兵士たちに 禁術を放とうと手を向けました。 それを見た青年は、 これ以上人を殺させはしないと 守りを捨て、剣士に教わった剣技で 魔術師に斬りかかりました。 魔術師が迎撃の魔術を放つ前に、 青年の剣が魔術師の身体を貫き、 魔術師は地面に背中から倒れ、 そのまま動かなくなりました。 遂に、邪悪な魔術師を打ち倒すことが出来たのです。 兵士たちや僧侶と剣士が 魔術師の討伐に喜ぶ中、 青年は事切れた魔術師に 僧侶から教わった治癒魔法をかけて 剣に貫かれた傷を治し、 手を組んで死体を丁重に弔いました。 その姿に兵士たちは 青年を、敵にも敬意を払う素晴らしい 英雄だと、口々に(たた)えました。
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