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そして、今。
寝台で廼宇を手すさびに撫でるのみのこの手はただ、穏やかで温かい。
……ああ、これは。
俺が長らく飢え求めていた場なのである。
事後の満ち足りた気のなか、暁士様の脇にてくつろぐひととき。
あれやこれやと気の向くままに語を交わし、そしてやがては暁士様の手が、そう、……こうして、俺の耳上の髪を撫でに来る。
昨夜は疲れすぎてすぐに識を失ってしまったゆえに、まだ時の早い今宵はしばし、ゆっくりと味わおう……。
こん、こん。
うっとりと目を閉じてほどなく、扉を叩く音がした。
廼宇のみ起きて身を正し返事をすれば、入り来たのは元怜だ。
背後の寝台より「ちっ」と邪なる声がした。
「おくつろぎのところ恐れ入ります。こちらの調書の裁可をいただきたく」
…………ん?
……つまり。
趙家で廼宇が寝込んだ折と同様、常にぺとりと貼りつく暁士ではあるが、残念ながらここは西中都ではない。職場があり、目付までもいる北大都。
「す、住処に届けるなど、なんと無粋な。しかもここは廼宇の部屋ぞ」
「本来ならば昼下のうちに済ませていただくことでしたが。……昼下はどちらで、何をしておられたのです」
……この寝台にて、色欲に食欲にとやりたい放題をしておられたのです。
「……ちっ。働きすぎたのだぞ、私は。ならば、休みすぎてもよかろうが」
元怜相手に、子供ですら言わぬ論を恥ずかしげもなく口にする。
「明日の朝には徳扇様の屋敷までお届けせよとのお言葉にございます。今のうちに是非」
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