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内房には茶が自由に飲めるよう用意されていた。板机が並び、すでに男女三人が休んでいる。廼宇を見てにっこりとした。
「店舗担の福来です。我が名を知った暁ジョウ様に店舗と命じられ、それよりずっと店舗ばかり。実際、性に合っております」
確かに、名だけでなく、丸い鼻に肉付きのよいぷっくりとした耳は縁起が良さそうで、この男から買う布ならば縫物も上手く行く気がするだろう。
「功清です。未陽さんと共に仕入れと店舗を半々にしております。今は緑如さんも入っておいでですから、休ませていただいています」
「私は店回りの下働きの安慈です。住み込みの皆さんのお世話をしたり、今はこうしてお茶の準備、午後には茶菓の準備など」
そろいもそろって愛想がよく、小気味よく話す様には好感しかない。
新しい店なればまだ小さいが、規模の大小に関わりなく、同じ街にこの店があれば汎材在店には脅威だったかもしれない。人間性は武器だ。
「皆様、とても能のある方ばかりとお見受けします。よくぞ集まりましたね」
雨華が準備してくれた饅頭をかじりながら未陽に言う。
「採用には必ず暁ジョウ様が問答をなさいます。あのようなお方ですけれど、私としても素晴らしい同僚ばかり増えてとても楽しゅうございます。実際、廼宇様も、とても覚えがよくいらっしゃって。算術も早くて驚きました」
「以前にやっていたことがあるので、ただの慣れです。……あの、暁ジョウ様があのようなお方、というのは、その」
「廼宇様も問答をなさったのですよね。驚かれたことでしょう。私も驚きましたが、慣れれば、ただただ、楽しいですよね。……でも、禁忌には本当に、十分にご注意ください」
「禁忌?」
聞き返すと、皆のほうこそ得心がいかぬらしく、四人ともがしばし黙した。未陽が不思議そうに問う。
「三つの禁忌。ご存じですよね」
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