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「恐れ入ります。心当たりがございませぬ。先ほど緑如様より伺うべきでしたか」
「いえ、当初に暁ジョウ様よりきつく申し渡されます」
未陽は背筋をピンと張り、座り直した。
「ひとつ。金銭、物品、盗むこと厳禁。盗めば指を切断する。量によっては腕、または首を切断する。
ひとつ。店長に嘘は、厳禁。指、腕、首、のいずれかを切断する。
ひとつ。同僚を陥れること厳禁。指、腕、首、のいずれかを切断する」
そして、廼宇をじっと見つめて言った。
「暁ジョウ様は不思議なお方です。嘘をついても絶対に、わかる。本当にわかるのです。常ならぬ瞳をお持ちです。そして普段はあのようなお方ですが、禁忌を破れば必ずや、本当に制裁をなさいます。私も指を切られた者、腕を落とされた者をこの目の前で見ております。……その後に刑部が来ることもなく」
「……承知しました。ご忠告、感謝致します」
しかし、暁ジョウ様ともあろうお方がなぜお伝えしていないのか、と四人ともが不思議そうにしている。まあ、俺が禁忌に触れることはしないと思ってはいるのだろう。六角での春李を思い出しつつ、しばし胸を苦くした。
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