店長

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 ……が、まずはともかく、仕事だ。  蔵の中の在庫を区画で分けて十日ごとに調べ、帳票と確認する。汎材在店でもやっていたことだ。あちらは蔵が二つあったがこちらは一つのみ、しかし背が高い。内階段のある二階建てにて少ない土地に広さをつくり、多くの種類の布地を効率よく分別して置けるようになっていた。  一つの生地が置かれる場所は浅く広く、奥には別の布がある。 「奥にも道がございますのであちらから見られます。棚はとかく浅く作れ、奥まったところに古びた布が溜まり虫食いや湿気での色違いなどが起こるは大変憎らしい、との店長のお言葉にて、清潔に保たれております」  ふと、魔法の筒を弄っていた時の暁士を思い出す。  あれでなかなかの実務家だろう。六角の設計も自らと言っていた。蔵の布地置き場の設計など、嬉々としてやったに違いない。 「昼前、昼下に一度ずつ、他の同職の者とずらして休み、食を取ります。昼下の点心は店にて振る舞われますゆえ、昼前にご入用の分だけお手持ちください。本日の分はお持ちですか?」 「はい。昼前分は入用だからと伺いまして、軽いものを持っています」 「良かった。では、本来は私とずらしてとりますが、初日ですからご一緒しましょう」
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