さぁ、一緒に飛ぼう

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初春のヒンヤリとした夜空に、一部雲に隠れた白い月が冷ややかな光を放っている。闇の中を俺は重力に従って落ちていた。自分の体がこんなにも重いと感じるのは生まれて初めてだ。今まで俺は重力の存在しないのと同然の世界で生きていたから。 やがて人間界の家の屋根の上に音もなく着地する。そこで背中の左羽がまたしても悲鳴を上げる。健康な麻色の右羽とは違い、左羽はボサボサと羽が抜けて枯れたように垂れていた。これが〝石〟を使ってしまったことの代償なんだ。俺は途方に暮れてただ真上を見上げた。ここから手をどんなに伸ばしても、故郷の空には届かない。 「ミュー……すまない……」 蚊の鳴くような声で呟く。右手に握ったいびつな〝石〟の硬さが憎らしくて仕方がない。最後の言葉が夜の空気に紛れると、重い沈黙が辺りを覆いこんできた。 たった一つの偉大な〝石〟のせいで、俺は故郷の空も、大切なものも、全てを失った。
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