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「都合が変わって、いまこのときにもこっちに向かっているかもしれないじゃないですか。もしも夜道を歩いているなら、あの美しさです、変態に襲われるかもしれない」  姉好きの悠李ならそこまでの心配りをするのは目に見えていたが、この展開はまずい。非常にまずい。下手すれば、警察を動員して麻里佳の保護を企てるだろう――そうなってしまえば、最悪の結末を迎えてしまう。 「いまからでも姉さんの友達の家に行きましょう。そしてともにガーディアンを務めましょう」 「さっきも言っただろう。麻里佳はその友達の家に泊まってくるって。忘れたのか?」 「いえ、忘れてはいませんよ。変態に襲われる危険があるのは何も夜中だけじゃありませんからね。それに、明日は夜道を歩いて帰ってくるかもしれないじゃないですか」 「ああ、思い出した思い出した! そういえばあいつ、明日の朝、友達にクルマで送ってもらえるって電話があったんだ! きっと友達のケータイを借りてだったんだな」 「……本当ですか」 「本当だとも!」 「そうですか、それなら安心ですね」  咄嗟に閃いた方便に腹落ちしたのか、悠李は逆立てた神経を緩慢にさせて、穏やかな気配に戻った。  畳みかけるならここか、と澤田は思った。  どんな会話からでも姉についてを捻出する彼に悠長に構えてはいられない。 「なあ、悠李くん」  澤田は睡眠薬作戦に打って出る。  ただし、スナック菓子に混入させるのではない。  悠李は菓子に手をつける気配がない。だから、こちらから能動的にかつ違和感なく食べ物に誘導しなければならない。しかも、早急に成果を出さなければ暴かれるのは時間の問題だ。 「風呂に入らないかい? ここまで来るのは疲れたろう。酔いが深まる前に風呂に入って気持ちよくなってよ」 「でも、姉さんが……」 「姉さんは大丈夫だよ。今頃友達とわいわいやってるって」 「そうですかね」 「そうだよ」 「……そうですね。そうさせていただきます」
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