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「おっと、じたばたと暴れないでください。殺すのは当然でしょう。あなたはぼくから姉さんを結婚して奪おうとしていたのですから」  それに、と悠李は目を細める。 「あなたは殺人鬼でもあります。殺人鬼とは、すなわち人に殺されるべき鬼なんですから、あなたは殺されてしかるべきなのです」  悠李は風呂場の扉に隠れてあったリュックを取り出し、ジッパーを開帳する。  ハンマー、アンドアックス、鎌、バタフライナイフ、サイレンサー銃、スタンガン、爆竹、剣山、硫酸、ライター、鋸……ひと目見ただけでも夥しい量の殺人道具がリュックの中から窺えた。 「見たらわかるでしょう。脅しじゃないんですよ。本当に、本当の本当に――あなたを殺すんです」  澤田は全身を芋虫のように動かしながら、悠李から距離をとろうとする。しかし、それは徒労でしかなかった。たった数回のたうつだけで浴槽の側面に打ちつけ、それ以上下がることはできないのだから。 「二重の意味で姉さんを奪ってくれましたからね。あなたをどうなぶってさしあげましょうか」  悠李はしゃがみ込み、澤田の目の高さに合わせる。それは睥睨よりも一層圧迫感を与えた。 「あなたが姉さんを殺す動機――それはこれでしょう」  悠李はそのへんの床から封筒を手に取り、澤田の胸元に放り投げた。それは澤田の体勢に従って腹部へと滑り落ち、ベルトでつっかえ停止する。  封筒に厚みを持たせていた中身がその流動に沿ってこぼれ落ちた。  封筒から出てきたのは写真だった。  被写体は西園麻里佳。  ただし、彼女の傍らにいるのは澤田孝太郎ではない――澤田の知らない男性だった。
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