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ドールハウスをそのまま落とし込んだかのような、理想の子供部屋。
それがヴァレンティーノ・ファミリーの一人娘、アリーチェの部屋だった。
楕円形のドレッサー、天蓋付きベッド、クローゼット、花柄ソファ、たくさんの動物のぬいぐるみが置かれ、乙女の夢がギュッと詰め込まれている。
「お嬢様にお似合いの、可愛らしいお部屋ですね」
ネロは心にもない感想を告げる。
白とパステルピンクを基調とした室内に、黒髪・黒スーツの自分はひどく浮いていた。
おまけにフワリと鼻につくローズの香りも不愉快だった。
すると部屋の主の返答は意外なもので――――
「わたしはこの部屋キライ。見て、あれ」
アリーチェの指さす方に向けると、ソファに座れないくらい置かれたぬいぐるみの山があった。
「わたし、一言も欲しいなんて言ってないのに、勝手にパパが買ってきて言うの。この年頃の女の子はこういうのが好きだろって。理想の少女像を押しつけられるの、もううんざり。けっきょく、パパの大切なものは『わたし』じゃなくて『体裁』なんだよね」
アリーチェはそう言って、マシュマロのようなほっぺをプクッと膨らます。
「じゃあ、お嬢様は何がお好きなのですか?」
その質問に、不機嫌な顔をコロリと変え、悪戯っぽく歯を見せて言った。
「プライドの高い犬を屈服させること」
アリーチェはネロを突き飛ばす。
重心を失った体はそのままベッドへと倒れこんだ。
すぐ起き上がろうとするが、上半身に跨がるアリーチェが重石になり、身動きがとれない。
「っ、何のつもりですか!?」
「脱いで」
「は――――?」
「わたしの目の前で、ヌードになりなさいって言ったのよ」
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