お人形遊び

2/4

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 ドールハウスをそのまま落とし込んだかのような、理想の子供部屋。  それがヴァレンティーノ・ファミリーの一人娘、アリーチェの部屋だった。  楕円形のドレッサー、天蓋付きベッド、クローゼット、花柄ソファ、たくさんの動物のぬいぐるみが置かれ、乙女の夢がギュッと詰め込まれている。 「お嬢様にお似合いの、可愛らしいお部屋ですね」  ネロは心にもない感想を告げる。  白とパステルピンクを基調とした室内に、黒髪・黒スーツの自分はひどく浮いていた。  おまけにフワリと鼻につくローズの香りも不愉快だった。  すると部屋の主の返答は意外なもので―――― 「わたしはこの部屋キライ。見て、あれ」  アリーチェの指さす方に向けると、ソファに座れないくらい置かれたぬいぐるみの山があった。 「わたし、一言も欲しいなんて言ってないのに、勝手にパパが買ってきて言うの。この年頃の女の子はこういうのが好きだろって。理想の少女像を押しつけられるの、もううんざり。けっきょく、パパの大切なものは『わたし』じゃなくて『体裁』なんだよね」  アリーチェはそう言って、マシュマロのようなほっぺをプクッと膨らます。 「じゃあ、お嬢様は何がお好きなのですか?」  その質問に、不機嫌な顔をコロリと変え、悪戯っぽく歯を見せて言った。 「プライドの高い犬を屈服させること」  アリーチェはネロを突き飛ばす。  重心を失った体はそのままベッドへと倒れこんだ。  すぐ起き上がろうとするが、上半身に跨がるアリーチェが重石になり、身動きがとれない。 「っ、何のつもりですか!?」 「脱いで」 「は――――?」 「わたしの目の前で、ヌードになりなさいって言ったのよ」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加