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『京子のために、その1!』
「だれ?」
私は、ハサミンを見る。こいつじゃない。
その声は、私の心に直接語りかけているようだった。
『ひじを 脇の下につけ 離さないよう心掛けて 内角をねらい……』
「これって、『あしたのジョー』に描いてあったボクシングの技の出し方だ! 確かジャブ!」
私は、すぐさま言葉通りに身構えた。そのまま、素早くハサミンに近づいた。
心の声が素早く言った。
『えぐり込むようにして、打つべし!』
「打つべし!」
生まれて初めて、左ジャブを打った。
まさか私が、反撃に出るとは思っていなかったのだろう、みごとにハサミンの顔面に左ジャブが当たった。
漫画『あしたのジョー』のシーンを思い出しながら、続けてジャブを繰り出した。
「打つべし! 打つべし!」
続けてジャブがヒットする。ハサミンは、ひるんだようだ。
私の心に再び声が、
『京子のために、その2! 右拳に全体重を乗せて、まっすぐに的をぶち抜くように打つべし!』
と、叫んだ。
「右ストレートだ!」
私は、ひるんだハサミンの鼻っ面に思いっきり右ストレートをぶちかました。
クリーンヒット!
ハサミンはダウンこそしなかったが、枝切バサミを取り落とした。
そして、頭をブルブルと振ってボクシングの構えになった。
え? ボクシングで来るの?
だめだ、私ボクシングなんて、やったことないし。できるのは、たった今覚えたジャブと右ストレート。巨大なハサミンをダウンさせるほどのパワーなんてないし。
ハサミンは、そんなことはお構いなしに右に左に太い腕でパンチを繰り出してくる。
「ひやっ! きゃっ!」
パンチをよけるので精一杯だ。
「京子ちゃーん。ノックアウトだよー。その後ユックリ切ってあげるからねー」
ハサミンは、楽しんでいるようだ。
また、段々腹が立ってきた。でも、逃げ回るだけじゃだめだ!
ハサミンが体をのけぞらし必殺のパンチを打って来た。
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