11人が本棚に入れています
本棚に追加
ドカッ!
ドアを蹴破るハサミン。ドアを押さえていた私も吹っ飛んで床に転がった。
上体を起こした時、ハサミンの枝切バサミが私の首に迫っていた。
反射的に横に転がってハサミをよけて、立ち上がり危機を脱した。
限られた範囲の屋上だ。どこに逃げる?
意外に素早い動きをする巨大ハサミンは、執拗に私を追ってくる。
傍から見ると、私とハサミンが楽しく鬼ごっこをしているように見えるだろう。
やがて、鬼に捕まってしまう……。そして、あの大きなハサミで……。
「嫌だ! 嫌だ! もう嫌だ―! くそぼっこが!」
追い詰められた私は叫んだ。
『くそぼっこ』とは、激怒した時の下品な讃岐弁で、『大馬鹿野郎!』という意味だ。
逃げ回る自分に腹が立ち、理不尽に恐怖をかき立てるハサミンに腹が立ち、理性はブチ切れた。
その時ふと、私にささやきかける声が聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!