山下京子、生物教員28才只今授業中。

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 ドカッ!  ドアを蹴破るハサミン。ドアを押さえていた私も吹っ飛んで床に転がった。  上体を起こした時、ハサミンの枝切バサミが私の首に迫っていた。  反射的に横に転がってハサミをよけて、立ち上がり危機を脱した。  限られた範囲の屋上だ。どこに逃げる?  意外に素早い動きをする巨大ハサミンは、執拗に私を追ってくる。  傍から見ると、私とハサミンが楽しく鬼ごっこをしているように見えるだろう。  やがて、鬼に捕まってしまう……。そして、あの大きなハサミで……。 「嫌だ! 嫌だ! もう嫌だ―! くそぼっこが!」  追い詰められた私は叫んだ。 『くそぼっこ』とは、激怒した時の下品な讃岐弁で、『大馬鹿野郎!』という意味だ。  逃げ回る自分に腹が立ち、理不尽に恐怖をかき立てるハサミンに腹が立ち、理性はブチ切れた。  その時ふと、私にささやきかける声が聞こえた。
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