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 果てしない夜に足を踏み入れてすぐ、店先の外壁に寄り掛かる老婆を見つけた。 見飽きた景色が俺たちを取り囲む中、ただ一方向がすっと指し示される。 「女という生き物は、好きな奴の前では心配させまいと振る舞うもんよ。  過ちを清算するなら今のうちじゃな」 俺は瞬時に意味を理解した。数十メートル先で彼女が蹲っていた。 溢れ出た感情が助けを求めている。懸命に。救うべき誰かの。 往生際の悪い悲哀は俺が始末してやる。 契約上は彼女の隣で屈んで慰めることも、 謝ることもできない能無しかもしれない。 だからと言って、あらゆる道を絶たれたと音を上げるのはまだ早い。 右がダメ、左がダメなら、後ろから力の限り支えてあげればいい。 そして、どんな過去さえも抱擁する未来へ導いてあげればいい。 これだけ酷い状況に陥らないと行動を起こせない俺は文句無しに不甲斐ない。 罪滅ぼしと罵られればそれまでさ。 想いがどう? 好意がどう? 自己中心的な考えはいい加減にしろ。 まずは、まずは……。  俺は一心に駆けていた。 鋼の塊が行き交う右も、秋の風が過ぎ去る左も見えちゃいない。 うるさいぐらい明るい光を背に、ひたすらに前を目指した。
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