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 俺は椅子に座るよう勧め、彼女が毎日買っていくホットコーヒーを差し入れた。 「なんだか元気のない様子がここ1ヶ月続いていたので、  勝手ながらお声掛けさせていただきました。  ゆっくりでいいですから、ぜひお話を聞かせてもらえたらな、と」 「えぇ。よく気付かれましたね」 いつも見てますから、とは流石に言えなかった。 彼女はコーヒーを湯気越しに一口啜ると、遂に閉ざされた口を開き始める。 「実は……」 一通り話を聞き終えた俺は愕然とした。 話の内容は、ちょうど1ヶ月前から、 家族や職場の皆が何となく自分を避けているような気がするというものだった。 学生時代から仲の良かった親友すらも、はたと逢ってくれなくなったらしい。 老婆の契約が悪影響を及ぼしていることは言わずもがな。 俺が両隣を独占したばかりに。すぐにでも取り消さなければ。 しかし、解約は不可能ときつく念を押されている。 曖昧な態度を貫き、真実を見て見ぬふりするのが精一杯だった。 彼女が礼を述べて颯爽と店を出た後も、 俺は責任の重さと無力感を背後に、延々と頭を抱えるしかなかった。
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