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 「いらっしゃいませ」 いつも以上に息を荒くして駆け込んだ彼女は、わざわざ俺の方を見て微笑む。 何度経験しても平静を保てない。照れを抑え切れず、俺は黙って下を向いた。  彼女は最短距離で商品をレジまで持ってきた。 俺が遠慮がちに「340円です」と告げれば、 「あ、ちょうどあります」と彼女は艶のある革財布から小銭を取り出す。 「340円ちょうどお預かりします」 レシートを手渡すと、「ありがとうございます」という労りと共に、 魅力ある笑顔を再び見ることができた。 なんてチャーミングなのだろう。盲目の恋でも別にいい。 小さく会釈した彼女は程なくして店を後にする。 普段は熱を帯びた視線で見送れるだけで充分なのだが、 今日はなぜか居ても立ってもいられなかった。 情動のままに追い駆けたい。 結果はどうあれ、ずっと胸に秘めていた想いを伝えたくなったのだ。
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