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「クールなブルーは余計なことは喋りません。ただ任務遂行するだけです。報告もリーダーにしかしません」
「なにそれ」
意味がわからない。そう思いつつも、笑いが零れてしまう。そんな私につられるように諒太も笑うから、また笑ってしまう。
図書室から職員室を経由して教室までの短い道のりで、話しかけるついでに、何度も諒太の横顔を盗み見た。いつもどおりに。……いつも以上に。
「廊下賑わってんね」
「そりゃそうでしょ。私達もみんなで写真撮ろうよ」
「ああ……てかさ、俺達の教室の前、異常じゃん?」
諒太が言った異常の原因――それは、私達だった。
黒板にデカデカと記されている2つの名前。天野花恋、黒沢諒太。そして2人の間に描かれた大きなハートは、私から諒太へ向かって矢印で射抜かれていた。
この症状を何と言えばいいのだろうか。心臓が痛い? 息が苦しい?
周囲の視線がうるさ過ぎて見回すことすらできないが、何より気になるのは諒太の反応だ。だってこれは、誰かが書いたただのイタズラではなく、真実。今日まで言えずにきた、私の気持ちそのもの――。
「はっ」
微かに震えた空気に反応して、指の先がピクッと痙攣する。
吐息のような乾いた音を漏らして笑ったのは、隣に立っていた諒太だった。
「ウケる。……ここで写真撮る?」
「ばか」
形だけの笑顔を作ってみても、諒太の顔が見れない。
私達が黙って後始末を始めると、教室はさらに騒がしくなった。
本来の私達なら、笑い飛ばすなり、冗談交じりに怒るなりしていた。クラスメイトは私達の性格を知っているから、だからあえて誰も消さなかったのだろう。
「誰が書いたと思う?」
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