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「見つかって良かったわね」
「うん! 邪魔してごめんね、じゃーね」
手の代わりに、ポケットから取り出したボールペンを振り返す。
時間的に図書室を経由している暇はないので、渡り廊下の横にある非常階段を駆け上り、立入禁止の柵を乗り越え、屋上へ。
「よう! 準備は?」
「カンペキ」
「さっすが! やっぱ花恋で正解だったねぇ」
「いやいや、じゃんけんで負けただけじゃん」
息を切らしながらやって来た私を出迎えたのは、エイジとナオ、それからダイチ。……一人足りない。
「諒太は?」
「はーい、いまーす」
聞き慣れた少ししゃがれた声。人を馬鹿にしたような、締りのない喋り方。
振り返って顔を確認するまでもない。
「花恋、足速くなったんじゃない?」
「そっちは遅くない? 学校に来たら直で集合のはずだけど?」
「直だよ、カバン持ってんじゃん」
諒太はなんの謝罪もせず、誰よりも早く私の隣で腰を下ろした。
1番最後に来たくせに。こういうところ、ほんとムカつく。
「じゃあ全員揃ったし、最終打ち合わせするか」
放送部の部長、兼私達のリーダーでもあるエイジから号令がかかり、みんなもコンクリートの上へ座り込む。私と諒太の口喧嘩は日常茶飯事なので、いまさら誰も何も反応しない。
「まずは花恋」
「DVDの入れ替え完了。この本を図書室に戻せば終わり!」
「次、ダイチ」
「CDは放送室にあるし、後は無線の準備だよね。大丈夫、分かってるよ」
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