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ノクターンと咆哮
今日、地球が滅亡する。
そんなニュースを、遠い惑星で起きていることのように、ボケっと聞いていた。「今すぐ、逃げてください」機械音声で流れ出す、3回目の避難勧告。でも、どこに逃げろと言うのだろう?その言葉は命令というより、願望のように聞こえた。
ソファの上、梶崎は手持ち無沙汰をごまかすように、机に置いていたウエハースの箱を揺らす。リピングにカラカラと乾いた音が鳴る。海外からの輸入品のウエハースは歯にくっつきやすい上に、甘すぎた。が、オーストラリアにいる彼のおばさんが誕生日に送りつけてくる、このウエハースを彼は最後まで嫌いになれなかった。テレビ画面に意識を向けている間に、あと一枚になってしまっていた事実に驚きながら、中をちゃんと覗いても、枚数は変わらない。いつもなら、これで一年分だった。両手で持っても収まり切らないほどのボックスをまじまじと見つめて、彼は首をかしげる。当然、あるべき砂糖の胸焼けがなかった。ついに、体まで狂ったのかと、思った。彼はそれで、膨らんだ腹を撫でて、ため息をついた。
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