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ポールは持ってきていた鉢を差し出す。鉢を見た庭師は中の土に触ると呆れたように言った。
「こりゃ、中まで水がしみこんどらん」
驚いたポールは鉢を覗き込んだ。庭師が指し示す場所は、少し掘り返されていた。その土は乾燥していて全く水気がなかった。
「ちゃんと毎日水をやっていたのに」
「上だけ濡らしても、中までちゃんと水をすわせにゃ意味がないです。それにこれはどこに置いとったんですか」
「日当たりのよいテラスに……」
「芽が出るまでは、日陰がいいんだぜ。土が乾きにくいんだ」
庭師の隣で覗き込んでいた子供が得意げに言った。
「そうだったんだ」
良かれと思ったことが、ことごとく間違っていて落ち込んだ。
「まぁ、もう一回植えなおすことです。種が生きとりゃ芽も出ます」
庭師の慰めに僅かな希望を抱く。植えなおす時に、種を掘り起こし見てもらったが何の種かは分からなかった。教わりながら土の準備をして、たっぷりと水を含ませた土に植えなおす。
祈るように世話をしていると、五日後には念願の小さな双葉が出て来たのだった。
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