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「ほんと、皆レイラを頼ってくるんだな。家族であっても」
「自分たちで解決できることは解決してもらいたいものだよ。発熱したから私って発想、何?医者いるでしょ。薬あるでしょ、試せよ」
「はいはい、こっちこい、レイラ」
カペルに頭を撫でられて落ち着かせられる。
私はむすっとしながらその手に甘えていた。
「カペルだけの天才姫になれたらな……」
「そんなの許してもらえないだろうな」
「薬とか色んなもの開発するのは楽しいけど、そのたびに天才って言われるの疲れた」
「レイラが嫌なら、俺が断ってあげるけど」
「そんなことしたらカペルの立場が悪くなるからダメ。……カペルが癒してくれるからもういい」
カペルに抱き着きながら顔を押し付けるとカペルが背中を優しくなでてくれた。
「この間クラウスがさ、自分たちの話を書くとしたら誰が主人公になると思うって聞いてきたんだ」
「え?」
「俺はクラウスじゃないの?って言ったんだけど、クラウスは困ったように笑って『僕じゃなくて、絶対にレイラでしょ』って言ったんだ」
「なんで?」
「世界を救った、とか、未知の物を発明、とか、世界中から欲しいと手を伸ばされてる、とか。レイラの事を話せば話題が尽きないからって」
それはそれで失礼な気もするが。
心にクラウスを殴ることを決めてカペルを見る。
カペルは私を見て優しく微笑んだ。
「でも、確かにそうかもって」
「カペルまで……」
「俺も、クラウスも、ティアナも、皆レイラの事を誇らしく思ってるんだよ。俺達にはこんなに凄い幼馴染がいるんだって」
その言葉に目を見開く。
私、皆からそう思われてるの?
皆だって、私からしたら誇りに思える幼馴染なのに。
「俺たちずっと不思議だったんだ。レイラはたまに『自分はモブだ』って言うから。レイラは脇役なんかじゃないだろって」
「……っ」
「俺にとっては大事な婚約者、クラウスとティアナにとっては大事な幼馴染。俺達は仲間だろ。モブなわけない。それに、シルヴァ家にいるお前がモブであるわけない」
「カペル……っ」
「俺もクラウスと同じ意見だよ。俺の話の中のお前は間違いなく、主人公そのものだから」
違うよ、カペル。
私はモブだったの。
貴方は知らないけど、元の世界での私は貴方に簡単に捨てられるの。
幼馴染達から大事にされてなかったの。
ティアナを、クラウスを、カペルを、誰も助けてあげられなかったの。
私はそれが嫌だっただけ。
貴方は攻略対象だし、私は顔も名前もなかった令嬢だし、絶対に捨てられるって覚悟してたの。
だって、おかしいじゃん。
攻略対象になる貴方が、ただのモブと結婚するなんて。
……そうか。
私はいつの間にか、自分で世界を変えていたんだ。
ティアナを助けるために変えようと思った世界は、私も救ってくれたんだ。
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