悪役令嬢、誕生前のお話

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国中で大流行しているインフルエンザ。 ただ、これもこの国には初めての病だ。 前世で貰えるような薬なんて無い。 ただ私は7歳の子供だ。 『調合の仕方』は知っているけど、私にさせてもらえるかは分からない。 薬さえあれば治してあげられるのに……。 元々インフルエンザは感染病だ。 普通の風邪とは広がり方が違う。 どうしたものか……。 「未知の病……恐ろしいですね」 お母様が心配そうにそう呟く。 お父様は眉を寄せてため息をついた。 「陛下に病名を問われたが、私にも答えが見つからなかった。こんな病は初めてだ。治し方も分からず、そのまま命を落としている者もいると聞く。ケネスやレイラがかからなければ良いが……」 体力の無い人が高熱を出せば、そりゃ命に係わるでしょう。 何とかして食い止めないと、もっと酷いことになりかねない。 「あの……」 私が口を開いた瞬間、ダイニングの扉が勢いよく開いた。 入ってきたのは顔面蒼白になったクリスティ指導統括とティアナ。 統括の腕に抱かれているのはティアナのお母様だった。 「助けてくれ……っ」 「どうしたんだ、クリスティ統括!?」 「妻が……あの病にかかってしまった……っ」 皆が息をのんだ。 これは、ティアナが悪役令嬢になってしまうフラグでは? このまま放置していればティアナのお母様は命を落としてしまう。 そしてティアナは統括に厳しく育てられて、あの結末へと向かっていく……。 それだけは絶対にダメ。 「すまない、統括。私にも治し方が皆目見当つかないんだ」 「そんな……っ!」 「本当にすまない……」 悔しそうなお父様。 ティアナも泣き出しそうだった。 「その病、治せますよ」 私がそう言うと皆が固まった。 「何を言ってるんだ、レイラ。医者にも、シルヴァ家の書庫にもこんな病は載ってないし、知らないんだ。それを治せるって……」 お兄様が困惑した表情で私を見た。 私はティアナに近づいて手を握った。 「大丈夫だからね、ティアナ」 「レイラ……っ」 「絶対に私が何とかしてみせる」 私が笑顔を向けるとティアナは泣き出して私に抱き着いた。 「とにかく、今はクリスティ公爵夫人を部屋へ。ベッドに寝かせて安静にさせてください。額に冷たいタオルを乗せてあげてください。こまめにタオルは替えるように」 私の指示に動き出すメイドさん達。 私は呆然としているお父様とお兄様を見た。 ・
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