88人が本棚に入れています
本棚に追加
「何をぼさっとしているんですか?」
「え……」
「今から私の言う薬草を用意してください」
「レイラ……?」
「早くしてください。この病は治す事が出来ます」
驚いている二人。
お兄様は困惑していたがお父様は頷いた。
「この寒波はレイラが予知して先手を打っていたからこそ、あまり打撃を受けなかった。レイラなら、この病を治せるかもしれない」
「父さん……」
「私はレイラを信じよう。シルヴァ家の天才姫の、な」
その異名は恥ずかしいから出さないでもらいたい。
私は二人に必要となる薬草を伝えた。
この国と前世での薬の作り方は少し違っている。
食べ物に関しては前世と同じだけど、薬草などに関しては前世では見なかったものが多い。
でも、書庫で薬草の本を見て全て覚えたので何も問題ない。
薬関係については大得意だ。
何故なら私の前世での職業は『医薬品開発研究者』、つまり『薬を研究している人』だったから。
本当なら研究に研究を重ねて安全に薬を開発しなくてはいけない。
だけど、今はそんな悠長な事は言っていられない。
それにこの国では前世とは違って薬の適応能力が違うようだった。
流石はファンタジーな世界というか、簡単に薬が出来るのを知って驚いたものだ。
お父様たちが集めてくれた薬草を調合して薬を作る。
前世でいうところの『インフルエンザ用の薬』だ。
ただ本当に薬の作り方は違うし、この世界での薬になるので治る保証は出来ないけど……。
少しでも緩和できれば……。
高熱を出して亡くなる人が居る事は前世でもあった。
ただここまでじゃなかったけど。
薬を完成させると私はクリスティ公爵夫人が寝ている部屋へと向かった。
「レイラ……っ」
「お待たせ、ティアナ。この薬を飲ませて」
渡した薬を見てティアナが頷く。
苦しそうな夫人に何とか薬を飲ませて再び寝かせる。
すぐには状態は良くならないけど、これから恐らく熱が下がってくるだろう。
そうなったらあとは様子を見るだけ。
「ティアナも、公爵様もお休みなってください。明日の朝には熱は下がっていると思います」
「それは本当か!?レイラ嬢!」
「はい。ですので二人もお休みを。夫人が体調を戻されてもお二人が倒れてしまえば元も子もないので」
そう言うと公爵はホッとした表情を浮かべた。
夫人に薬を飲ませた次の日。
熱が下がった夫人に私はお礼を言われていた。
「本当にありがとうございます」
「いいえ、夫人の熱が下がって良かったです」
この国の薬の回復力って凄いな。
内心そう思いながら夫人に笑顔を向ける。
公爵もティアナも安心したように笑っていた。
「あれだけ苦しかったのが嘘のようだわ。一体どうやったのですか?」
「薬草を混ぜただけです。特別な事は何もしていません。ただ……この病を治せるという自信があったから出来たのかもしれません」
真っ直ぐに3人を見つめているとティアナに抱き着かれた。
・
最初のコメントを投稿しよう!