悪役令嬢、誕生前のお話

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それにしても本当に美味しそうなキャンディーばかりだ。 宝石みたいにキラキラしていてワクワクしてしまう。 「で?レイラはどれにすんの?」 「うーん……。ロリポップキャンディーも捨てがたいんだよねー。でも小さなキャンディーも沢山食べたいし……」 「どっちも買えば?」 「そんなに買ったらお父様に怒られる」 「伯爵もレイラの功績は知ってるし、大目に見てくれるんじゃないの?」 「そう思って調子のるでしょ?そしたら大目玉くらうの」 「調子に乗るからだろ」 カペルは呆れながらも私の見ていたロリポップキャンディーを手にした。 それから店員さんに色々な種類のキャンディーを詰めてもらった。 「カペル?そんなに甘いの好きだった?」 「俺のじゃないから」 「え?じゃあ誰の?」 「お前の」 キャンディーの代金を払うとそのままカペルは私に袋を渡した。 「え?」 「俺が買ったなら伯爵も何も言わないだろ?」 「いいの……?」 「いいから買ったんですけど」 フッと笑って私の手を握ってくれるカペル。 なんでこの人、こんなにカッコいいことするの? これから先、私の事捨てるくせに。 これ以上好きにさせないでよ。 捨てられた時、カペルの事すぐに離してあげられなくなるよ。 カペルの手を握り返すとそのまま歩き出した。 キャンディーショップを出ると私達はそのまま街を歩いた。 ゲームの中の世界をこうして自分の足で歩いているなんて不思議な気持ち。 皆が温かい恰好をして、雪で遊んで、そして医師が病気を治している。 今の世界を作ったのは、間違いなく私なんだ。 「レイラが教えてくれた『マフラー』ってホントに暖かいわ」 そう言いながらピンクの可愛らしいマフラーを握るティアナ。 よく似合ってて鼻血出そう。 「どうしてレイラはこんなものを思いつくの?」 クラウスにそう聞かれてビクッとする。 そりゃ前世では普通にあったものだし、私が発明したわけじゃないから。 「うーん……なんとなく、浮かんだって感じ?」 「凄いね!」 クラウスとティアナが目をキラキラさせる。 その目は心が痛くなるからやめてほしい。 そう思いながら視線を逸らす。 すると、家と家の間に座り込む女の子を発見した。 あの子、どうしたんだろう? 服装も、布を纏ってますって感じだし。 私はカペルの手を離して女の子に近づいた。 「どうしたの?」 そう声をかけるとビクッとして私を見た。 「え……?」 「どこか怪我したの?」 「ううん……」 「じゃあどうしてここで座ってるの?」 私の質問に戸惑っている女の子。 それから後ろの皆を見てビクッとした。 「貴族様……っ」 「貴族、嫌い?」 首を傾げると女の子が震えた。 これは何かあったな。 こういったゲームの世界ではあり得る話だ。 『貴族にいじめられた子供』 特別、こういった子を助けるイベントとか無かったけど、だからといって見捨てるなんてしたくない。 この国の人達には笑顔でいてもらいたい。 そう思うのは贅沢な願いだろうか。 ・
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