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あれから月日が経ち、私達は16歳になっていた。
そう……物語開始の年齢である。
私の知っているティアナではなくなったから、今のところティアナが悪役令嬢であるということはないだろう。
現在進行形で優しい女神だからだ。
相も変わらずティアナラブの私は毎日のようにティアナとお茶を飲んでいるくらい。
「レイラお嬢様、お手紙が届いております」
そう言って私に手紙を渡してくれる専属メイドのマナ。
マナを拾ってからマナは凄く努力をして、今や優秀なメイドとなっていた。
そして10年の間にもう一人、私の専属として働く人物が出来た。
マナと昔一緒に貴族に奉公していた男の子、レオだ。
マナから『酷い虐待を受けている男の子がいる』と言われて、私はレオを助けるべく、その貴族からレオを買ったのだ。
当然お父様にはこっぴどく叱られたけど。
マナもレオも今となってはとても優秀な人物。
お父様も二人の事は凄く信頼している。
マナがレオを助けてほしかった理由は恐らく、マナがレオを好きだからだろうけど。
まあ、それは聞かない事にしている。
影ながら応援すると決めたのだ。
「ありがとう、マナ」
「どうぞ、お嬢様」
手渡された手紙を見て息をのむ。
これは……アストロベガ城への招待状。
ついにこの日がきてしまった。
「いかがなさいましたか?」
「ううん、なんでもない。……ところで、レオはどこ行ったの?」
「え?レオく…レオさんですか?」
「ああ、私の前では『レオくん』って昔の呼び方でいいよ。二人を私の専属にしたのは私なんだし、事情も知ってるから」
「お嬢様……。本当にお嬢様は優しいです」
マナが可愛らしく微笑む。
ティアナに次ぐ癒し……。
「俺がどうかしたの?お嬢」
そう言ってやって来たのは執事服を身に着けたレオ。
ここはゲームの世界だし、こうやってイケメンに育つのは理解できるんだけど……いささかイケメンすぎやしないか?
元々綺麗な顔はしていたけど、まさか成長してここまでイケメンになるとは思っていなかった。
マナが好きになるのも頷ける。
まあ、それでも私はカペル一筋なんだけど。
「丁度良かった。レオ、マナ、今度のアストロベガ城のパーティーには二人も一緒に来てくれる?」
「俺とマナも一緒に?マナはともかく、俺まで必要なんですか?」
「いつ、どこでティアナが襲われるか分からないでしょ?レオもマナも腕は立つし、ティアナを守ってもらいたいから」
「お嬢、いつもティアナ様のことばかりですね。もっと自分の事も大事にしたらどうです?」
「レオくん、言い方……っ」
「お嬢はこの国の『天才姫』なんです。この10年、お嬢はこの国に多大なる貢献をしてきました。農業も豊かになり、貿易も盛ん。観光客も増加しています。これもお嬢の発案があればこそ」
前世で普通にあったものを提案しただけなんだけどな。
人の発明横取りしただけなんだけどな。
そう思いながら私は咳ばらいをした。
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