悪役令嬢、誕生前のお話

2/16
前へ
/105ページ
次へ
「聞いて、レイラ。私は、クラウス王子が幸せになれるのなら、悪役にだってなれるわ」 大好きな幼馴染が言ったセリフ。 何気ない会話の中でのセリフ。 気にする事なんてないのに、気にするしかなくなってしまった。 一気に甦る記憶に冷や汗が止まらない。 ああ、私は悪い夢でも見ているのだろうか。 『そういうの』はファンタジーの世界での話で現実にはありえない。 だってそうでしょ? 死んだら人間なんて、消えるんだから。 でも……信じるしかなさそうだ。 「どうしたの?レイラ。顔色が悪いわ」 目の前にいるのは幼馴染のティアナ。 物心ついた時から一緒に遊んでて、優しくて、勇敢で、頭がよくて、私は彼女が大好きだ。 だけどそんな彼女が……悪役令嬢になってしまう未来を私は知っている。 今日は私の6歳の誕生日。 『レイラ』 それがこの世界での私の名前。 そんな誕生日に、私は『前世』の記憶を思い出してしまったのだ。 私は『転生』というものをしているらしい。 ファンタジーの中のものだと思っていたけれど、現実に起こるなんて誰が予測できた? それにティアナは、私がとっても嫌っていた悪役令嬢になる(予定)。 そうなったら私は……ティアナの側にいれる? この世界は王子様と恋愛が出来る乙女ゲーム。 6カ国の王子様とその執事や騎士と恋愛が出来るのだ。 そういったゲームでは当然悪役とかは存在しているもの。 その悪役がティアナ。 そ、そんなのって……。 「気分が優れないの?大丈夫?部屋に戻る?」 心配そうに私の肩を抱いてくれるティアナ。 うう……好き……っ。 こんなに優しいのにティアナが悪役令嬢になるわけない。 だけど、私が知る限りティアナは悪役令嬢だ。 何がどうなったらそんな世界に……? 「どうしたんですか!?レイラ!」 「このパーティーの主役が体調不良か?」 そう言って近付いてくるのは、まさしく攻略対象の二人だった。 .
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

88人が本棚に入れています
本棚に追加