物語スタート

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「そういえば、レイラの好きなクレームブリュレ、あっちにあったけど」 「え!?ほんと!?」 「相変わらず食べ物に食いつくの早いな」 カペルは呆れたように笑うと私の手を引っ張って歩き出した。 目の前に現れる沢山のデザート。 めっちゃ美味しそう。 流石は世界的に有名なワイナー様が所有するお城。 世界各国を束ねているトップがワイナー様である。 ワイナー様の息子も確かゲームの中で見たけど、めっちゃイケメンで優しい王子様だったなー。 クラウスほどではなかったけど。 クラウスとティアナは今は私の推しだ。 あの二人の幸せをぶち壊す奴は誰であろうと容赦しないと決めている。 レオには『お嬢、物騒です』と言われているが知った事ではない。 「どれも美味しそうで迷うな」 「全部食べればいいじゃん」 「そんな事したらお父様に怒られる。『そんな令嬢はどこにもいない』って」 「レイラは特別だろ?」 「何が特別なの?」 「国を救った天才姫」 「その呼び方恥ずかしいからやめてってば」 楽しそうに笑うカペルの笑顔に吐血しそうになる。 この笑顔、守りたい。 そんな事を考えているとカペルが知らない令嬢達に話しかけられた。 貴族社会においてパーティーは一つの外交の場。 親交を深めて仲良くなれば国にとっても利益がある。 そんな事分かってるし、カペルだって仕事だからだって分かってるけど……。 何度経験しても慣れないな。 『嫌だ』って思ってしまう。 私以外に笑顔を向けるカペルを見たくないって思ってしまうのは、本当にいけない事なのに。 私はカペルから少し離れて近くのゼリーを手に取った。 壁に行くとあっという間にカペルの姿は見えなくなった。 ほんとに、人気者だな。 ぼんやりそう思いながらゼリーを口に入れる。 ナニコレ、めっちゃ美味しいんだけど。 感動で目を輝かせていると隣でクスッと笑う声が聞こえた。 横を向くと私は驚いた。 だってそこに居たのはゲームで見たワイナー様の息子、アルベルト・ジョーンズ様だったから。 「アルベルト殿下!?」 「そんなに美味しかった?それ」 「は、はい……」 「そっか。そう言ってもらえるとウチのパティシエたちが喜ぶよ」 なんと眩しい王子様スマイル。 この会場には各国の王子様も来ているけど、その中の誰よりも輝いて見える。 クラウスも負けてないと思ってるけど。 「君、名前は何て言うの?」 「ご挨拶が遅れてしまい申し訳ございません!エストラルド王国から参りましたレイラ・シルヴァと申します」 頭を下げるとアルベルト様は「え?」と声を出した。 「君があの『天才姫』?」 その呼び方は外にまで知れ渡っていたのか。 恥ずかしくて穴に入りたい。 「エストラルドの大寒波を予期して事前に大災害を食い止め、そして未知の病の薬を作ったっていう……」 「恥ずかしながら、私がそうです……」 自分で認めるのめっちゃ恥ずかしい。 だって自分が天才だって言っているようなもの。 顔を上げられずにいるとアルベルト様に手を掴まれた。 ・
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