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「俺、君に会ってみたかったんだ!」
「え?」
「シルヴァ家は世界の宝だと言われている一族。それほどまでに君たち家族の頭脳は優れている」
私以外はですけどねー……。
「父も何度もシルヴァ家には助けていただいたと言っていたんだ。だから俺も自分でシルヴァ家について調べたことがあって。その中に、俺と同じ年齢の天才の女の子がいるって知った」
アルベルト様は確かワイナー様とは血のつながりがないんだよね。
ワイナー様ご夫妻には子供が出来なくて、夫人が若くして病で亡くなってしまったはずだ。
アルベルト様は孤児で引き取られたから城内でも冷たく当たられていたって設定だったはず。
だから勉強とか頑張って、国民や使用人達を見返したんだよね。
本当に尊敬できる人だな。
「レイラ、是非俺と友達になってくれ」
「私が殿下の友達!?」
「ああ。レイラと友達になれたら嬉しいなとずっと思っていたから」
ニコッと微笑まれると断れない。
イケメンってずるい。
「わかりました……」
「本当!?ありがとう!嬉しい!あ、俺の事はアルって呼んで」
「そんな!呼べません!!」
「俺が呼んでって言ってるのに?」
その言い方は本当にずるい。
ジョーンズ家には誰も逆らえないの知ってるくせに。
少し悔しくなりながらも私は頷いた。
エストラルドではクラウスを呼び捨てにしているけど、他国の、それも凄い人を愛称呼びするなんて……。
お父様に知られたらなんと言われるか。
「ところでレイラ、さっそくで悪いんだけど相談があるんだ」
「なんでしょう?」
「実は最近、父が城に街の女の子を連れて来たんだ」
「!!」
それはきっと主人公に違いない。
ビクッとするとアルはそのまま続けた。
「その子は両親を早くに亡くしていて一人で暮らしていたんだけど、先日住んでいた場所が火事に遭って。しばらくウチで預かる事になったんだけど」
「何か、問題が?」
「うん……。父は『街で助けてもらった』って言ってたけど、何だか俺達に対して媚びを売っているような気がしてならないんだ」
あれ?
なんか、私が知ってる主人公じゃない?
私が知ってる主人公はもっと可愛らしくて、アルも最初は『守ってあげたくなるような存在』って言ってたよ?
もしかして、ティアナの運命を一つ変えたから何かが変わったのかもしれない。
「偶然だけど、その子が城の使用人達に怒鳴ってるのを見てしまって。そんな事をするようには見えなかったから驚いてしまって」
「それは、そうですよね……」
「今日は彼女もここへ来ているんだ。どうも父が彼女を保護してくれる国を捜そうとしているみたいで」
「アルはどうしたいんですか?」
「俺はあの子と関わりたくないし、他国へ行ってくれるなら嬉しいけど。それは他国に面倒を押し付けているだけのような気がして。このまま俺が我慢すればいいだけの話ではないのかと悩んでいて」
話を聞くだけだと、なんか主人公の方が悪役令嬢っぽくない?
私が知ってるゲームの世界の『ティアナ』と同じに思えるけど?
「アルが我慢する必要はありませんよ。その子が他国へ行きたいと願うのなら聞けばいいではありませんか」
「だけど……」
「アルは優しいから自分を犠牲にしようとしますよね?でも、それが結果使用人達を苦しめる事になったら?アルは後悔しませんか?」
「それは、そうだけど……」
「私は自分のせいで大事な人が苦しむのなんて絶対に嫌です。そして私も嫌なものに関わり続けるのは嫌です。だから今は、その子の判断とワイナー様に委ねる事しかできませんよ」
そう言って私は手に持っていたゼリーを口にした。
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