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私を驚きながらアルが見ている中、壇上にワイナー様がやって来た。
本物めっちゃおじいちゃんなんだけど。
想像の倍はおじいちゃんなんだけど。
「皆様、本日は我が主、ワイナー様が開かれましたパーティーへお越しいただきまして誠に感謝申し上げます」
そう言って壇上で頭を下げたのはワイナー様のお付きの執事。
この人もめっちゃイケメンなんだよねー。
お金払うから攻略キャラにしてくれって何度思ったか。
今となってはカペル一筋だけど。
……って、そんなのんびり考えてる場合じゃない!!
この挨拶が終わったらヒロインと攻略キャラの出会いが始まるのだ。
人ごみに押されて倒れそうになった主人公を助ける運命の人。
その『運命の人』にクラウスが選ばれなければいいわけで。
フラグさえ折ってしまえば、この先ティアナが悪役令嬢になる事はほぼ皆無。
これは絶対に阻止しなければ!
キョロキョロと周りを見渡すと不思議そうにアルが首を傾げた。
「どうかした?」
「アルが言っていた女の子探しています」
「え?どんな子かも言っていないのに分かるの?」
それもそうだ。
私はビクッとして冷や汗を流した。
「い、いやー……。なんとなく想像?ですよ。アルが言っていた雰囲気で探しているようなものです」
「レイラは本当に凄いね」
感心したように、そんな純粋な瞳を向けられると心が痛む。
私は気にしないようにしてヒロインを探した。
そして見つけた。
ひときわ目を惹く美少女。
主人公補正と言った方が正しいのか、彼女は無意識に目が追ってしまうような存在だった。
ジェシカ・リード、このゲームの主人公だ。
そして私は青ざめた。
何故なら彼女はクラウスのいる方向へ歩いていたから。
絶対にダメ!!
慌てて私はクラウスの所へ向かった。
そんな私の手を掴むアル。
「レイラ?どうしたの?」
「アル!?ちょ、放してください!!」
「そんなに慌てて……。何があったの?」
「今は説明している暇……っ」
そう言ってアルの手を振りほどこうとすると急に腕を引かれた。
半ば抱き締めるように私を自分の方へ引き寄せたのはカペルだった。
「アルベルト殿下、お久しぶりです」
「君は……テイラー公爵の……」
「随分と私の婚約者と仲良くなられたのですね?」
カペルの目が全然笑ってない!?
どうして怒ってるの!?
固まっているとカペルがスッと私を見た。
「レイラ」
「は、はい!!」
「クラウスが呼んでるから行くぞ」
「え?クラウスが?」
カペルは貼り付けた微笑みをアルに向けると頭を下げて私の手を引いて歩き出した。
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