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すんごい怒ってるのはどうして!?
でも今はそんな事気にしている場合じゃない。
何が何でもクラウスとジェシカのフラグだけは折らないと!!
クラウスとティアナの側にたどり着くと二人は驚いたように私達を見た。
「二人ともどうしたの?」
そう問いかけてきたのはクラウス。
え?
クラウスが呼んだんじゃないの?
そう思ってポカンとすると、突然「きゃっ!」という可憐な声が聞こえてきた。
え……?
まさかと思って周りを見渡そうとして私は固まってしまった。
何も出来ずに私は目の前でクラウスがジェシカを助けるのを見てしまったからだ。
人ごみに押されて倒れそうになったジェシカをクラウスが受け止める。
その場面はゲームをしている際に何度も見た光景だった。
なんてこった……。
最悪な事態が発生した。
これは完全にクラウスルートへの分岐点。
驚いた顔のティアナも可愛いとか考えている余裕がない。
「大丈夫ですか?」
王子様属性のクラウスはいつものように心配そうにジェシカに声をかけた。
ジェシカは可愛らしい顔でクラウスを見上げると困ったように微笑んだ。
「すみません、人に押されてしまって……」
何度もプレイしたから分かる。
全く同じセリフ。
この後、嫉妬したティアナがジェシカに突っかかってしまう。
そしたらティアナは完全に『悪役令嬢』という立場になってしまう。
ティアナの顔が悲しげに歪んでいくのを見て、私の中の何かがプチっと音を立てて切れた。
「クラウス……いつまで女性の体に触れているつもり?」
「え?レイラ?」
「婚約者の目の前で、婚約者以外の女性にずっと触れているなんて……。エストラルド王国の王子様はそれほどまでに女性がお好きだったの?」
「え!?ち、違……」
「ティアナを悲しませるのなら、私はたとえ国を敵に回しても貴方と戦いましょう!!いかがです!?」
そう言ってクラウスを見るとクラウスは慌ててジェシカから手を離した。
ティアナはオロオロと私を見ていた。
「レイラ、あまりクラウスを責めてやるな」
「カペル」
「クラウスは人助けをしただけだ。そうだろ?『お嬢さん』?」
何か含みをもってジェシカにそういうカペル。
ジェシカは一瞬ビクッとしてから私達に笑顔を向けた。
「失礼いたしました。まさか助けていただいたのがエストラルド王国の王子様だったなんて……。無礼を働いたこと、お許しください」
「いえ……あの、怪我はありませんか?」
「クラウス殿下の優しいお心遣いに感謝いたします。私はどこも怪我などしておりません」
ジェシカは私達に一礼するとその場を去って行った。
これでなんとかクラウスルートから外れてくれればいいんだけど……。
「レ、レイラ……?」
「何?」
「怒ってる……?」
クラウスがびくびくしながら私を見てくる。
私はジッとクラウスを見てからクラウスにデコピンをくらわせた。
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