悪役令嬢、誕生前のお話

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今まで何とも思って無かったのに、こうしてこの世界の事を思い出したら見る目が変わる。 攻略対象の二人は私とティアナの幼馴染だ。 一人はもちろんこの国の王子様。 「クラウス……」 金髪に蒼い瞳、見た目はパーフェクト天使で、性格も王道王子様。 この人がティアナの婚約者だ。 「クラウス『様』だろ?全く、相変わらず失礼な奴だなお前は」 二人目は近衛騎士団団長の息子であるカペル。 茶色い髪に色素の薄い瞳、クールで優しくてイケメンでいい匂いしててめっちゃ強くていつも守ってくれててキュン死にさせてきて(以下省略)。 つまり私はカペルが好きだ。 だけど思い出してしまったらもう失恋確定なのだ。 だって私はモブでカペルは攻略対象。 絶対結ばれないじゃん……っ。 「いいんですよ、カペル。レイラは僕を皆と同じように見てくれているんです。僕はそれがとても嬉しいので、これからもレイラは僕を呼び捨てで呼んでくださいね」 「そうやってレイラを甘やかすから……」 「僕は何もレイラだけを特別扱いしていませんよ?カペルだって呼び捨てで呼んでいいんです。むしろ呼んでくれないと返事しませんから」 「は!?」 「僕とレイラとカペルとティアナの仲です。ああ、もちろんティアナもですよ。君は僕の婚約者なんですから」 そう言われてティアナは少し恥ずかしそうに、そして嬉しそうにした。 そうだよね、ティアナはクラウス好きだもんね。 ずっと見てきたから分かる。 この幸せが、壊れる日がくるって言うの? そう考えてハッとする。 ちょっと待ってほしい。 そもそもヒロインがクラウスを選択しなければ問題が無いのでは? ヒロインと出会うのは『アストロベガ城』でのパーティーだ。 それが行われるのは10年後。 平和協定を結んでいる各国の王子様達が集まり親交を深める場だ。 そこにワイナー様(めっちゃおじいちゃん)を助けた庶民のヒロインが招待される。 ワイナー様のお願いによって、しばらくヒロインを預かるところから物語は進んでいくのだ。 それに、クラウスが選ばれなければ問題ないのでは? 「……クラウス」 「どうしました?レイラ」 「クラウスはティアナが好き?」 そう聞くとクラウスが真っ赤になった。 「な……な……っ!?」 「好き?愛してる?今すぐ結婚したい?」 クラウスに詰め寄りながらそう聞くとカペルに引き離された。 「その辺にしといてやれ、ドS娘」 「カペル!」 「クラウスの様子見たら分かるだろ?」 そう言われてクラウスを見ると、真っ赤になって魂が抜けていた。 クラウスもティアナも両思いなのに、ヒロインが現れるとティアナは悪者になって、クラウスはヒロインを好きになる。 そんなのおかしい。 ここが誰かに作られた世界なのだとしても、私はティアナが好きだ。 絶対に、ティアナが悪役令嬢になる未来は阻止しなければ!! .
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