悪役令嬢、誕生前のお話

7/16
前へ
/105ページ
次へ
私の勢いに吹き出す父の隣の人。 近衛騎士団団長、そして総帥のカペルのお父様。 「失礼。レイラ嬢はとても立派な思考をお持ちですね。流石はシルヴァ家」 「今までそんな事、一度も言ってきた事はないが……」 それは馬鹿で能天気だったからです、お父様。 ティアナの命運がかかってる今は呑気に過ごしていられない。 私が動けば何かが変わる。 そんな気がする。 思い出せ、私。 このゲームの設定資料を馬鹿みたいに読み込んだくせに。 ティアナ・クリスティはどういう設定だった? 家族構成は? 私は絶対ティアナを悪役令嬢になんてさせたくない。 ……あ。 思い出した。 『ティアナ・クリスティ。ヒロインに数々の嫌がらせ行為をし、クラウスとの仲を引き裂こうとしたクラウスルートでの悪役令嬢。 父は近衛騎士団指導統括。近衛騎士団のNo.2である父に厳しく育てられた。心の拠り所であった母親は大寒波の際に未知の病にかかり、彼女が7歳の頃に病死。 以降、父との仲も悪くなり、彼女は人を信じられなくなる。親しかった友人達も離れていき、侍女に八つ当たりをするようになった。 唯一の支えであったクラウスの心も離れていく事を恐れ、ヒロインに嫉妬して嫌がらせ行為を繰り返していく』 なんか、そんな感じ!! つまり、その大寒波をなんとかすればいい。 寒波がくるのは仕方ないとして、何とか飢えを凌げたり、暖かく出来る何かがあればいいわけで。 この国、エストラルドは基本的に暖かい気候に恵まれた国だ。 そんな国に突然寒波なんてわけの分からないものがきてみろ。 そりゃ皆対応出来ないに決まってる。 だが、私は知っている。 なぜなら前世は四季がある国、日本で生きていたのだから。 当然冬というものは知っている。 まずは飢えを凌ぐための、この国の農作物について勉強しなくては!! 「お父様!書庫へ行って参ります!!」 「レイラ!?」 私は父の制しも聞かずに書庫へ向かった。 .
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

88人が本棚に入れています
本棚に追加