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そうこうしているうちにクラウスの生誕祭の日になった。
国を挙げてのお祭りだ。
凱旋パレードなんかも毎年ある。
国民からも好かれている王室の人間だし、国民も盛り上がっているように見えた。
「美味しそうな食べ物がたくさんある……」
「お嬢、よだれ出てますよ」
レオと一緒に街のお祭りに参加している私。
本当ならティアナとかクラウスとか、カペルとかと一緒に過ごしたかったけど仕方ない。
昔とは違うのだから。
クラウスは今日一日忙しく動き回るだろうし、これからの国を支えていく存在なんだ。
今日の誕生日は今までとは意味が違う。
これからクラウスは陛下の仕事を手伝っていく事になるそうだ。
お父様も楽しみにしていた。
それに伴って、ティアナの事も正式に王室へ迎える準備が始まった。
これからティアナはお城で生活をしていくようになるそうだ。
でもその前にジェシカの存在を何とかしなければならない。
ジェシカがティアナと一緒に生活するなんて、絶対に大人しくしている訳がないからだ。
私の目が届かない場所でティアナに嫌がらせをされたら発狂するだろう。
「ジェシカと話をするのは、ちょうど凱旋パレードが開催されている時間帯がいいですね。その方が周りの目もパレードに向いていますし」
「上手くジェシカを誘い出せそう?」
「大丈夫です。事前にマナがジェシカの部屋に写真付きの手紙を置いてきていますので」
手紙に同封している写真はジェシカがお城のメイドさん達に暴力をふるっている現場を押さえたものだ。
誰も見ていないと思っているジェシカの事。
きっと驚いていることだろう。
私は頷いた。
「ところで、この生誕祭にはワイナー様は参列されているの?」
「当初の予定は参列でしたが、今回は咳が止まらないとの事で参列をご辞退されてます」
「そう……大丈夫かな」
あとでワイナー様に咳き止め薬を送っておこう。
「ワイナー様の代わりにアルベルト殿下が参列されています」
「アルが?」
久しぶりにアルに会いたいな。
私と友達になってくれた優しい王子様。
ジェシカの動向に気が付いていたけど、自分が我慢すればいいって解釈をしたくらい優しい彼を守らなければと思った。
そんなことを考えていると、前から考えていた人物が歩いてきた。
「あ、レイラ!」
眩しいくらいの王子様スマイル!!
心臓がきゅっとなったが、私は平気なフリをしてアルに手を振った。
「久しぶりですね、お元気でしたか?」
「俺は元気。彼女が城から居なくなってからストレスも無くなってね」
「それは良かったです。あ、そういえばワイナー様の体調が悪いとお聞きしましたが……」
「咳が止まらなくて。熱はないんだけど、念のため今回はクラウス殿下の生誕祭の参加を見送ったんだ。代わりに俺が来ることになった。来てよかったよ、レイラに会えたし」
そんな事を言われると惚れそうになるからやめていただきたい。
私は咳ばらいをした。
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