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大量の本棚を見て一瞬眩暈がする。
これだけの本の中から農作物についての資料を探すの?
ちょっと無理くない?
でもやると決めたからには絶対にやり遂げてみせる。
だって大好きなティアナを助けたいから。
頭の中に再生されるティアナの断罪シーン。
あんなの目の前で見せられたら発狂する。
「ええい!!こうなったら手当たり次第に見て回ってやるんだから!!」
そう言って近くの本棚に手を伸ばすと、後ろから手が伸びた。
驚いて振り返ると、そこにはお兄様が立っていた。
「何をしてるの?レイラ」
「お兄様!」
王宮教師をしている年の離れた私の兄、ケネスお兄様。
優しくて頭のいいお兄様が私は大好きだ。
イケメンで女の人から人気があるけど、当の本人が鈍感で今まで彼女が居ないんだよね。
失礼な事を考えながら私はお兄様に隣国の事を相談した。
「レイラが隣国の寒波を知ってるなんて……。何か変なものでも食べたの?」
「失礼ですよ、お兄様」
「ああ、カペルあたりに聞いたのか。カペルは頭が良いから」
「そんなに私の頭は信用出来ませんか、お兄様」
お兄様は悪びれる様子もなく近くの本棚から一冊の本を取った。
「これがこの国の農作物についての本だよ。レイラにはまだ早いんじゃないかな?」
本の中を見てみれば特に難しい事は書かれていない。
何せ見た目は6歳だけど、中身は27歳なわけで。
何なら中身だけなら20歳のお兄様よりも年上だから。
「お兄様……」
「ん?」
「これじゃあ、寒波は絶対に乗り切れません」
トマトやなすって……完全に夏野菜じゃないか。
もっと冬の野菜を育てなければ、来年の寒波は絶対に飢えてしまう。
「お兄様、ご相談があります」
「なんだい?」
「ダイコンやハクサイ、ニンジンなどの野菜の種を入手することは可能ですか?」
私がそう聞くとお兄様が目を丸くした。
「それは大丈夫だと思うけど……。それはこの国で育てるには難しい野菜じゃないか?気温の問題があると思うけど」
「分かっています。ずっと暖かいこの国で、この野菜を育てるのは至難の業。ですが、もしも隣国の寒波がこの国にやってきたらどうです?」
「え?」
「今の野菜たちは育たなくなります。その代わりの野菜も必要だと思いませんか?」
「それはそうだけど……。仮の話でしょ?こなかった場合、どうやって育てるの?」
「……絶対に大丈夫です。私を信じてください」
そう言うとお兄様は私を見て微笑んだ。
「珍しいね、レイラがそんな事を言うなんて」
「う……っ」
「可愛い妹のお願いだし、用意してあげるよ。ただ、もしもこの国に寒波がきた場合、今育てている特産物は無くなってしまうね。それはとても寂しいね」
「大丈夫です。ビニールハウスを作って空調を管理すれば問題ありません」
「ビニールハウス?」
この世界ではそんなもの存在していないのか、お兄様が首を傾げた。
「ビニールで作られた部屋です。空調管理さえしてしまえば、特産品を失う事もありません」
私の提案にお兄様は驚くばかり。
それから私の額に手をあてた。
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