87人が本棚に入れています
本棚に追加
「お帰りになられる時で結構ですので、咳き止め薬を持って帰ってください。ワイナー様にお渡しいただければ」
「え!?ありがとう!」
「いえ。ワイナー様にはいつも勉強になることを教えていただいております。私がワイナー様にお返しできることなんて、これくらいですから」
「エストラルド王国の天才姫が何を……。腰の調子が良くなったのもレイラのおかげだって言ってたよ。本当にありがとう」
「お力になれてよかったです。あ、そうだ。これからお時間があるなら一緒に食べ歩きしませんか?」
私がそう言うとレオがため息をついた。
「お嬢。アルベルト殿下はお嬢とは違ってお忙しいんです。それに、食べ歩きなんてするのはお嬢くらいです」
「え!?」
人間はみんな食べ歩きをするものだと思っていた。
驚愕しているとアルが笑った。
「お誘いありがとう。でもごめんね。今はまだ仕事中なんだ。時間に余裕が出来たら俺から誘ってもいいかな」
「ありがとうございます!」
「俺も周りの人たちみたいに、何か食べながら歩いてみたいなって思ってたから」
アルはそう言うと私に手を振っておつきの人たちと話しながら去っていった。
「本当に完ぺきな王子様だよねー」
「完璧な令嬢とは程遠いお嬢とは天と地の差がありますね」
「レオ、失礼だとは思わないの?」
レオは周りを見渡しながら肩をすくめた。
凱旋パレードはもうすぐだ。
街の人たちも心なしかソワソワしている。
私は手に持ったアイスを食べながら綺麗に澄み渡った青空を見つめていた。
相変わらず寒波の影響で外は寒いけど、寒いと空気も澄んでるように感じるな。
寒い中でのアイスはまた何とも言えないくらい美味しい。
早くに溶けることもないし。
「カペル、会いたいな……」
なんとなく呟くとレオが息をついた。
*☆*――*☆*――*☆*――*☆*――*☆*――*☆*――*☆*
しばらくして凱旋パレードが始まった。
ジェシカとの待ち合わせ場所に向かうと、すでにジェシカは来ていた。
「お久しぶりですね、ジェシカ様」
「っ!!……レイラ様」
差出人はおおよその検討がついていたのだろう。
さすがにそこまで馬鹿じゃ無かったみたいだ。
私はニコッと笑いかけるとジェシカの手にある封筒を指さした。
「それ」
「!!」
「随分と好き勝手やってくれてるみたいですね。お城での生活は不自由なんですか?」
「……いいえ」
「自分の思い通りに動いてくれる人間が居ないことに対して腹が立っているって感じですよね。だって周りはみんな『クラウスとティアナ』ってそればっかだから」
「……」
「どうして自分の事じゃないんだろうって、不思議に思っています?」
私がそう言うと嫌そうに私を見つめた。
・
最初のコメントを投稿しよう!